2012年9月20日木曜日

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毎日新聞
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記者の目:
大津・中2自殺=加藤明子(大津支局)
毎日新聞 2012年09月06日 00時12分
http://mainichi.jp/opinion/news/20120906k0000m070109000c.html
◆全文引用


(1)
 「自殺の練習をさせられていた」。いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒が自殺した問題は、学校のアンケートに複数生徒がこう回答していたと7月4日に報じられて以降、各種メディアの集中的な報道が続いた。

 ◇いじめ「振り出し」から考えよう

昨年10月の自殺から9カ月後。遺族が市と同級生らを相手取り損害賠償を求めて提訴してから4カ月余 り。真相解明に消極的だった市や県警は手のひらを返すように動き出した。7月10日、越直美市長が訴訟での和解方針を表明。翌11日、県警は学校と市教委 を家宅捜索し、同26日から在校生らへの聞き取りを始めた。先月25日にはいじめの実態を再調査する市の第三者調査委員会が始動した。
 こんな大人の右往左往ぶりを冷ややかに見つめる子どももいる。取材に応じた同校の女子生徒は「今さらじたばたしても遅い。手を打つなら自殺の前にやってほしかった」と話す。
 自殺直後から取材してきた私にとって、この言葉は重い。当時、もっと多くの関係者から話を聞いていれば、より真相に迫れたかもしれない。

(2)
 昨年10月、在校生らへの取材を通じ、9月末の体育祭で手足を縛るなどのいじめがあったことを知った。 しかし、私は当時、学校は防ぎようがなかったのではないかと思った。男子生徒と、いじめたとされる同級生が急速に仲良くなったのは夏休み。いじめがエスカ レートしたとされるのは9月下旬以降で、自殺は2学期開始から41日後。あまりに短期間だった。

 ◇目を背け続けた学校と市教委

学校・市教委は自殺後、父親(47)の求めで全校調査を行い、昨年11月の会見で、「自殺との因果関係は不明」としつつもいじめを認めたうえで、「いじめに関する調査を終え、今後は生徒たちの指導に移る」と説明した。
 学校・市教委と遺族は裁判を念頭に、当初から対立関係にあった。いじめの具体例や調査手法など、説明に はあいまいな部分が多く、疑問を残したまま会見は終わった。私は、市教委が男子生徒の自殺から目を背けていると感じたが、会見では数時間にわたって質問を はぐらかされたままに終わってしまった。
 生徒の父親は7月25日、直接会って謝罪した越市長に「自殺から9カ月間、学校は何も変わらなかった。 息子の死が教訓とされていない」と厳しい言葉を浴びせた。私も取材のたびに父親から「しょせん人ごとなんだろう? この程度だから行政も変わらないんだ」 と真相追及の甘さを非難された。

(3)
  真相解明に向けた歯車は、遅まきながら回り始めた。7月18日、遺族がいじめたとされる同級生3人を暴行など6容疑で告訴した時、代理人弁護士は捜査員と「我々は歴史の転換点になる事件に立ち会っている」と話したという。
 先月25日の第三者委の初会合後、副委員長の渡部吉泰弁護士は「報道の過熱ぶりは異常だが、起きている 事実は、私が20年来関わった他のいじめ事例と変わらない。市教委が遺族に十分、情報を開示せず、重要な事実が後から出てくる」とした上で、「忘れてなら ないのは亡くなったお子さんの心情。そこを中心に調査したい」と力を込めた。
 私はこの2カ月間、この問題への対応の遅れを指摘された県警、市教委、市などさまざまな「当事者」が、 批判をかわそうという思惑を抱えて動くさまを見てきた。爆破予告による学校の休校や、教育長の襲撃事件も起きた。生徒の自殺が波紋を広げ、大津の夏は混乱 を極めたが、渡部氏の言葉を聞いて、もう一度振り出しに戻って取材をやり直したいと思った。

(4)
 子どもの人権侵害の相談・救済機関「兵庫県川西市子どもの人権オンブズパーソン」を6年間務めた大阪大 谷大の桜井智恵子教授(教育学)によると、いじめに遭って相談を受けた子どものほとんどは、いじめた側への処罰を望まず、「自分がどれほどつらかったか冷 静に伝えてほしい」と相談の場で訴えるという。「大人がちゃんと話を聞かなくてごめん」。桜井教授はそのたびに子どもたちに謝った。

 ◇子どもの訴え、聞くのが大事

教育長をハンマーで殴ったり、いじめたとされる同級生や担任教諭を匿名で脅迫したりしても、亡くなった生徒の弔いにはならない。それよりも、身近な子どもに目を向けてほしい。「つらいことはない?」。子どもの話をまず聞くことが悲劇を繰り返さない第一歩だと思う。

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