2012年4月10日火曜日

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nikkei BPnet
猪瀬直樹の「眼からウロコ」
東京都、東電以外にも売電し独占体制崩す
水力発電を自由化市場にも供給、条例改正を視野に


2012年04月10日
(1)http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120409/305068/?ST=business&P=1
(2)http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120409/305068/?ST=business&P=2
(3)http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120409/305068/?ST=business&P=3
(4)http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120409/305068/?ST=business&P=4


(1)
東京電力が公営電力の電気を随意契約で市場価格よりも安く買っていた。地域独占により、東電が勝手に値段を決めることができたからだ。今後は東電以外にも売り先を広げ、東電の独占体制を変えていく必要がある。

水力発電、廃棄物発電の電気を、東電に安く売電していた

東電と公営電力の随意契約が話題となっている。都道府県が運営している水力発電などの公営電力の電気を、東電が随意契約で市場価格より安く買っていたというものだ。
 4月2日には、東京新聞が1面で「1都4県水力発電 東電に安値で売電」と大々的に報じた。
 水力発電所を運営する東京、神奈川、群馬、栃木、山梨の1都4県が、東京電力に随意契約で安く売電していたことが分かった。(略)直近の市場取引価格で売っていれば、最大で年間117億円も増収になっていた(4月2日付東京新聞より) 
 
(2)

奥多摩の3つの水力発電の電気を10年契約で販売

地方自治体による発電事業(公営電力)は、都道府県が運営する水力発電と、市区町村の清掃工場が運営する廃棄物発電に大きくわけられる。
 公営の水力発電は、全国に約280カ所、合計約240万キロワットの発電能力を持つ。
 東京都は、奥多摩の小河内ダムを使い、3つの水力発電を運営している。多摩川第1発電所(1万9000キロワット)、多摩川第3発電所(1万6400キロワット)、白丸発電所(1100キロワット)の3カ所で、合計3万6500キロワットの発電能力がある。
 これら3つの水力発電は、電気をすべて東電に売っている。契約は長期契約で、現在は2009年4月から2019年3月までの10年契約が結ばれている。
 一方、廃棄物発電は、全国に約300カ所、合計約107万キロワットの発電設備がある。水力や廃棄物発電を合わせると、「特定規模電気事業者」(PPS)と呼ばれる新電力(9電力会社以外の電気事業者)の約7割の規模に達する。

(3)

新電力のシェアは3.5%

公営電力が東電に独占的に電力を供給してきたのは、法的な縛りがあったからだ。東京都議会は、小河内ダムを建設中だった1954年(昭和29年)に「東京都電気事業基本計画」を議決している。これは地方公営企業法の手続きに従ったものだ。
 東京都の電気事業は、多摩川の流水を利用して発電を行い、東京都の施設並びに東京都を供給区域とする一般電気事業者に電力を供給し、もって都民の福祉増進に資する(東京都電気事業基本計画より)
ここで書かれている「東京都を供給区域とする一般電気事業者」とは東電のこと、地方公営企業法の改正を受けて同じ内容を1966年(昭和41年)に条例化した。当時は東京の企業や家庭に販売する会社は、東電しかなかったのである。
 また、電気事業法施行規則では、公営電力と東電との契約期間を「10年以上の期間」とすることが明記されている。以上の法的位置づけにより、東京都の水 力発電は長期契約を結んで東電に売電してきた。全国の企業向け電力小売り市場は2000年度から自由化されたが、9電力体制の壁がある。新電力のシェアは 現在でも3.5%にすぎない。事実上、東電以外に買い手がつかない時代がつづいてきた。

(4)

議会と相談しながら条例を改正し、東電以外にも販売する

地方自治体がこのような随意契約を強いられてきたのも、東電の地域独占体制を前提としている。東京都と東電との契約期間はあと8年残っているが、さいわ いなことに、価格は2年ごとに見直すことができる。まず、東電への売電原価をもういちど洗い直し、価格の見直しをしていかなければならない。
 発電原価だけではない。福島第一原発事故後、新電力は脱東電志向の需要家から引く手あまたなのに、新電力には調達できる電力にキャパシティが足りない。公営発電の電力をマーケットよりも高く評価する可能性は高い。
 だから、発電した電気は東電以外の事業者にも売れるよう、競争性が確保される方策を検討していく。ただし、東電以外に電気を販売していくためには条例の改正などが必要となるので、議会とも相談しながら検討していくことになる。
 東電が電力市場を独占しているから、価格決定権も東電にある。水力発電や廃棄物発電から新電力に売る分が増えれば、東電の割合が減ってくる。全体で競争 状態が起きると、東電による一方的な値上げのような事態も回避できる。新電力を育てることで、東電の独占体制に風穴を開けるのだ。
 「発送電分離」という抽象的なかけ声だけでは意味がない。非東電の電力市場は一朝一夕にはできない。東電との随意契約をやめて、公営電力に競争入札を導入する。一つ一つの改革が電力市場弾力化への一歩である。
猪瀬直樹(いのせ・なおき)
作家、東京都副知事。1946年、長野県生まれ。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年 度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。東京工業大学特任 教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。著作に『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(小学館)『東京の副知事になってみたら』(小学館101新書)『言葉の力』(中公新書ラクレ)『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀(上・下)』(中公文庫)『東條英機 処刑の日』(文春文庫)。最新刊に『決断する力』(PHPビジネス新書)がある。 オフィシャルホームページ:http://inose.gr.jp/
猪瀬直樹Blog:http://www.inosenaoki.com/
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